『イマゴオリィイ家』の奇妙なブログ

アフェリエイトじゃないです。一緒にしないでください。

akボーイとガジェットボーイ

暮からひと月。

時候の挨拶からはじまる。

今週が冬で1番寒いと言われる大寒の暦であるが、

15度まで上がる日中には家の中より外のがあったかいので、窓をあける。

植物も勘違いして花を咲かせる準備をする。

明日は最高8度であるなんて知る由もない。

春の匂いは毎年懐かしさを運んでくる。

電車に乗ること、散歩をすること。

全てに懐かしさが生み出され続ける。

修学旅行は春の終わりだった。

中学3年生の頃の自分は完璧に安らげる場所を持っていた。

修学旅行の班決めは異例の8人メンバーで担任からは、

「まあ最悪布団ひければ何人でもいいよ」

と最後はなし崩し的に許された。

メンバーは自分と

保育園が一緒のりょうやとちひろ

ブラジルと台湾のハーフのアンデレ、

スケボーキングのともやとりく

無類の女好きからあだ名が無類になった友一と

あと1人はわすれた。

場所は京都で皆が行きたいところに行けるように予定を立てようとするが

それぞれがいかにしてゲームやタバコを持っていくかを考えていた。

ふと担任が話に割って入るように声をかけてきた。

別にやばい話はしてはいなかったが、ぎこちなくなる。

 

「おまえら悪いこと企むなよ。」

 

みなその場では笑っていたが、内心はびくついていたと思う。

 

「あ、そうだ。

 おまえら関西の人たちはノリいいから

 刀で切るフリとかしたらみーんなそろって

 

 "うわっ!やられたぁぁあ!"

 

   ってやるらしいぞ」

 

こーゆー話に興味を持つのは俺とちひろしかいない。

時は流れて修学旅行当日。

俺たち8人は行きたいところを巡ることなどせずに散歩をすることにした。

有名どころの道沿いをそれぞれやりたいように歩いて、食いたいものをたべていた。

お土産を無駄に買うちひろの荷物は2時間の散歩で両の手いっぱいになっていた。

集合時間が近づいている。

急いでバスに乗り込みむ。

もちろんちひろは1番最後に乗ってくる。

バスには座れず、とにかく奥の方へ行くと

明らかな関西人がいた。

担任の話を覚えていたのは自分と千尋だけだった。

 

ちひろちひろ!行ってこい!」

 

「えへへへ。」

 

ちひろは手でピストルの形をつくって、座っていた夫人に向ける。

 

 

 

「バァァァアアアン‼️」

 

 

 

 

バスに乗る人の視線がちひろにあつまる。

そしてちひろに打たれた夫人は少し間があって、

気づき反応を起こしてくれた。

 

 

 

 

「うわっ❗️やられタァ‼️」

 

 

 

緊張の後の緩和が訪れる。

夫人は声をかけてくれた。

 

「お兄ちゃんたち修学旅行?」

 

ちひろがすぐに答える。

「そうです!」

 

「まあ!楽しんでってね☺︎」

 

バスが止まり、夫人は立ち上がり降りる。

俺たちは笑顔で手を振り、ちひろはニヤニヤしている。

バスはゆっくりとまた進み出した。

 

ちひろ!やってくれたな!」

 

「な!めっちゃおもろいなあのおばさん」

 

ちひろの満足そうな顔を見て俺も少し嬉しい気持ちになった。

 

ややあってバスは終点の駅につく。

 

それぞれが荷物を持ち、降りる準備をしだしていた。

ちひろが急顔で確認をし出す。

 

「ねぇ!みんな俺のお土産ひとつたんねーんだけど!」

 

「は?どーゆーこと??」

 

「くっそ!盗まれたわ!!絶対やられた!」

 

たしかにちひろの荷物が減ってる気がしないでもない。

 

「やっば!!お土産ねーよくっそ!」

 

「盗まれたなお前絶対」

 

そう。盗まれていた。

 

「誰だよ!!まぢでふざけんなよー!」

 

ちひろとおれはふと目を合わせる。

きっと同じことを考えている。

 

犯人はあのババアであった。

 

 

 

 

 

 

ちひろの話をすこし。

ちひろはクラスには絶対1人はいる都市伝説が大好きなやつだった。

ちひろの話は主に二つでフリーメイソンの話か黒田官兵衛の一生の話をする。

どちらも話し始めると2時間はかかる。

おれはその話が好きでよく聞いていた。

都市伝説の前はまだパソコンでYouTubeを見る時代だったので、ニコ動をみたり、アメブロ見たりしていた。

そして、"検索しては行けない"というジャンルにハマる。

これが全ての始まりだったのだが、俺とちひろが仲良くなったのは、一緒にそれを検索し合うことで毎朝ホームルーム前にその話をして、検索したことをメモして話していた。

UFOの呼び方とかそーゆー月間ムーみたいな話から、

1000クリックやひとりかくれんぼみたいな怖い系なんかも、誰かがまとめた記事をみて検索したりしていた。

その中で空想の話のような昔の話のような

そんな話を見つける。

それが

"人間をペットにして尿路結石は高値で買取されている"

という記事である。

今思えば明らかな空想であるが、

当時その話でちひろとよく話していた。

 

「尿路結石で指輪とかつくって、ダークウェブで売られてるかもね」

 

そして帰ってからダークウェブを開こうとする。だが、見れるわけもなく頓挫する。

ちひろも同様次の日に話をして、放課後ちひろの家で遊ぶことになった。

ノートパソコンを膝に乗せ、都市伝説を探し続けていたとき、

ちひろのお母さんが入ってきた。

 

「こんにちわ!かいとくん!」

 

「こんにちわ!」

 

「よかったら食べてこれ!」

 

ちひろのお母さんが気を使って出してくれたのは

エビフライとコロッケだった。

ちひろのうちでは揚げ物にはタルタルソースだった。

ちひろがすぐさま頬張り、またすぐパソコンをいじりだす。

俺も遠慮なくエビフライを食べようとした。

そのエビフライは少し変だった。

エビフライは尻尾ではない方から食べるのだが、

このエビフライには

どっちからも尻尾が生えていた。

 

 

「おい!ちひろ!!このエビフライやべーよ

 どっちも尻尾ついてんだけど!」

 

ちひろは笑いながら聞き返す

 

「笑笑やっば!どーゆーこと?」

 

俺も笑う

 

「笑笑ほら!どっちも尻尾!」

 

「ほんとだ!やべーなこれ」

 

ちひろは少し考える顔をしてすぐにパソコンに目を向け出した。

 

「こんなエビフライあるかよな!ちひろ?」

 

「かいと!ちょっと待って!」

 

「ん?」

 

「お前そのエビ」

 

「うん。」

 

「ダークウェブのエビだよ絶対」

 

                   以上