まんせー
20までにしたら良い事ってなんだろう。
質問された。
学校の子に、
自分は若い頃にやっとけばよかったことがふと考え付かなかった。
ーーー「若いうちはたくさんあそんどけ」ーーー
24になった今でもたくさん遊んでて思うことは、
気合い入れれば会えるし遊べるから別にそんな焦らなくてもいい、
じゃあ何をやっとけばよかったのだろうか。
映画、音楽、本のカルチャーの類はやりたかったが、それを伝えるには趣味が合う必要があるし、
その子はカルチャー好きでよくやってる。
思い出をたくさん作る必要はある。
思い出とはなんでもいい。
ここへ行った、あそこで食べた、喋った、ボケた。
ゲームもカルチャーもおしゃれも恋も全部。
"青春"と同じ問いな気がする。
いま"青春"に戻れたらどうするか?
そう考えればわたしは同じ結論な気がする。
当時のゲームを存分にやり尽くしていたかったし、
当時からませガキでロックをかき鳴らして、放送部に入って誰も知らないT-REXを流していたかもしれない。
なにをしたかっただろうか。
本質はそれをやる事での20代になった時に思い出して笑えたり、懐かしむ事ができるかである。
一人暮らしはしたら思い出になる。
新しく住む街やそこから通う道、近くの店。
誰も自分を知らない場所に行くことはある種の解放感や孤独感がある。
私も一人暮らしした門仲へそろそろ行こうかと思う。
今はあの時とは何もかも違う。
深い思い出がある。
それを今の自分は見たい。
あの頃と違うのか同じ街並みをみて泣きたい。
貯めれば貯めるだけ思い出は膨らむ。
ただ忘れる前に行きたい。
うまくそこの一番大きい感情を受ける時に行きたい。
"思い出"を作ることなのかもしれない。
若さゆえの過ちなどなくて
「"思い出"に"色"をぬり、鮮やかかつ豊かにすること」
面白く濃い思い出を作ってほしい
それで俺を笑わせてほしい。
すべらない話を作ってほしい。
そう切実に思い、
"そんなのない"
と結局自分で考えさせるしかできなかった自分はまだまだであると認識した。
黒雲から白い線が網目状に駆け抜ける。
途端に雨音が聞こえ、クラシックからメタルへリズムへ変わる。
白い壁が迫ってくるのがわかる。
音はどんどんおおきくなる。
「うっわ、まずい。」
普段から持ち歩いている折り畳み傘もこの瞬時のメタル調の雨に耐えられるわけもなく、
全身を濡らす。
滴り落ちる水がこの豪雨の威力を物語っていた。
雨を凌ぐために入った建物は明かりはついておらず、雨もあいまり、あまり中から音は聞こえない。
感じからして立てたのは新しい。
気持ちの余裕がなく、必死に携帯していたハンカチで体を拭く。
ーーブブッーー
ケータイが胸元で振動したのがわかり、すぐに画面を見る。
薫だ。
水で操作がおぼつかない。
ーー豪雨⚡️⚡️迎えに行こうか?ーー
ーーRE.たのむ!既に濡れてびちょびちょだ!
コウカドウの向かいの道路の家に雨宿りしてる!ーーー
矢車駅からニ駅でそこから歩いて10分の広告業者で働くカズオは雨になるといつもはコウカドウという和菓子屋さんで待ち合わせをして薫の車を待つ。
ケータイをしまい、待っていると、明かりが消えているはずの家から音が聞こえる。
初めは引きずる音。
雨音でよく聞こえないが男と女の会話。
よく聞こうとする。
強い雨が一瞬引いたように聴覚が男たちの会話に集中する。
「お前は足だ。今回の1番の成果は俺なんだからな?」
「わかってるわよ。そのかわり尻はワタシにちょうだいよね。」
男の声は若くない。
のぶとく酒焼けた声は発する内容をより怖くさせる。
ダンッ!
カズオは一瞬の間があって唾を飲む。
一体何を食べているのだろうか。
明らかに重いものを引きずる音や大胆に大きな刃物で切る音が聞こえる。
ダンッ!!
2度目の音が聞こえると同時にまた声が聞こえる。
今度はなんと言っているか聞こえなかったが、笑い声が途切れ途切れで聞こえる。
先ほどまでの体温はなく、途端に寒気を覚え、こんなずぶ濡れなのに、汗をかいている。
気づいた時には息を殺していた。
すると、途端に目の前が白くなった。
雷だ。
そして徐々にその白は色彩を戻していく。
窓から見えたのは人だっ。
人が3人。
いや、一人はよくみると頭や足が分断されている。
そして、暗く黒く、光とは正反対の液体を全身に垂らした男と女がみえる。
声を上げるより先に雷が鳴る
カズオは体が固まる。
そして暗闇から四つの光が浮き出る。
少し遅れて目があっていることに気づいた。
カズオは動けない。
四つの光は視線を合わせ、何かまた喋っている。
カズオは何と言ったのかが聞こえずとも理解できた。
「まだ食えるか?サチコ」
いじょ